BLOG お花のお便り
8週間ぶりにロックダウンが一部解除されたパリに住む友人よりエッセイが届きましたので
ご紹介します。
政府による外出制限が段階的に解除された五月の夜、発表によれば感染者は延べ約14万人。
フランスは、2万7千人もの死者を出した今も尚2万2千人が入院中と大変な状況にあります。
約2ヶ月もの間連日400人以上の人々が亡くなってきた惨状はフランス人の心に計り知れない傷を
与えてきました。
フランスの人口は日本の凡そ半分ですから、この数字が如何にフランス人に衝撃的だったのかは
想像に難くありません。
さて、ある調査によりますとこの50日以上にも及ぶ外出禁止令でフランス人の体重が平均
2.5キロ増えたそうです。
私としてはどうやって平均体重を調査したのかそちらの方が気になりますが。
まあさておき兎にも角にもどんな状況であっても可能な範囲で楽しいことを探すのが人間です。
外出禁止令が発令されカフェやレストランが営業禁止になった途端、パリ市内に点在する
各種高級食材屋さんの売り上げが軒並み上がったということで話題になりました。
やはり美味しいものを食べるということに人は幸せを感じるんですね。
「お店はどこも閉まっているし他にやることもないしこんな時だからいつも素通りしていた
あの高いお肉屋さんにいってみよう!」とか、「あの気になっていた数種類のフロマージュを
買って食べ比べてみよう」とか、「時間もあるからちょっと手の込んだ料理をしてみようかな」などなど。
また在宅時間が伸びるとそれまでには見向きもしなかったものが急に気になりだしたりして、
人間って面白いですね。
普段よりも時間を長く感じた り、外の空気が恋しくなって窓を開けたり、1日の終わりを
陽射しの傾きで悟ったり、いつも聞こえもしなかった置き時計の秒針の音が妙に耳に響いたり。
突如新しい発見や忘れていたことを思い出したりしますよね。生活が激変することで人は新しい感覚、
眠っていた感覚を呼び起こすことができるのかもしれません。
慣習的にまた外見を気にすることもあってパリではつい2ヶ月前までマスクをしているフラ
ンス人なんて見かけることは全くなかったのに、今や装着義務時間外であってもマスクをして
いるフランス人しか見ません。
生死が関わってくると人は取捨選択がはっきりして劇的な変化にも積極的に順応するんですね。
このコロナの恐ろしさは、効果的な薬剤が依然として無い中で目にも見えず感染しても明確
には自覚できないまま、発症すれば致死率が少なくともゼロではなくなるということでしょうか。
きっと「もしや?」なんて少し不安になった方もいらっしゃることだろうと思います。
そんな時人は一瞬「もし残りの人生があと僅かになってしまったら」なんて考えてしまいますよね。
そうやって私たちは「こんな筈では」という事態が実はいつでも起こり得るということを
再認識すると共に、その様な中であっても健康的に楽しく逞しく人生を謳歌してゆきたいと願うものです。
実は今春桜を見に日本に行こうかと思っていたのですが、あれよあれよと出入国も厳しくな
りついには飛行機も飛ばなくなってしまいました。
まさに「こんな筈では」になってしまった訳です。
人が歳を重ねてゆく毎に春のひととき一心に咲き乱れる桜の美しさに心惹かれるのは、儚い
ながらも優美に舞い散る薄紅色の花びらに自身の憧れや人生を重ね合わせるからかも知れません。
今年見ることなく過ぎ去ってしまった春の風景がなにか色々教えてくれているような気がします。
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