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BLOG お花のお便り

冬を経て機を待つつぼみのように

パリ在住の友人からエッセイが届きましたましたので、ご紹介します。

 

「冬を経て機を待つつぼみのように」

激動の2020年があと数日で幕を閉じようとしています。

新年の幕開けとともに突如出現した得体の知れないコロナウイルスは、
移動する人々を媒体に国を超えて瞬く間に世界に広まり、
私たちは目に見ない恐怖と長らく対峙することを余儀なくされました。

 

「少しの間我慢すれば何かしらの有効策を得てある程度元の生活に戻るだろう」
と多くの人は楽観的に思っていたかも知れません。
その根拠のない淡い希望的観測が、今まさに引き裂かれようとしています。
私たちは依然としてコロナ禍の環境から脱却できていません。

 

そんな中、感染拡大と共に世界中で熾烈な競争を経て開発されたワクチンは
今までにない早さで関係機関の認可を受け既に人々への接種が始まっています。
私たちはこの人間が独自で作り出した社会で生きている以上
いつまでも停滞している訳にもいかないのです。
人々は今このジレンマの中で揺れ動いています。

 

フランスではワクチン接種が新年1月に先ず高齢者施設において、
その入居者とスタッフを対象に実施されることになっています。
続いて75才超の高齢者と医療関係者に、そして若年層については
春以降にと計画されていますが、人類の焦りと製薬会社への様々な
憶測が垣間見えるワクチンに人々は疑念の思いでいっぱいです。

フランス国民はマクロン大統領がワクチン接種を義務としなかったことに安堵しています。

 

さて、フランスでは今秋、パリ首都圏の中古住宅取引価格が2012年以来
初めて低下したと話題になりました。
この二度に渡る長期の外出禁止令とそれを受けての大幅なテレワークの浸透で、
パリを主とした都市部でのアパート生活に終止符を打ち、自然が豊富で広い敷地を
有することができる一戸建てを求めた地方への移住に人気が出たのです。

私たちは既存の一般的とされる価値観をなんの躊躇もなく自分の価値観として扱い、
その正誤を顧みないことが多々ありますが、テレワークという革新的な勤務形態は、
私たちに新しい価値観を与えるきっかけとなりました。

 

人間の価値観とはそれほどまでに一種の「思い込み」に近いものが多いのかも知れない
と思うと同時に、どの様な変化の中でも様々な価値観を見いだし順応して生きてゆこうとする
人間の強さを感じます。

 

日本人は古来から多くの自然災害と共に生きてきました。
故に、我が国は自然の流れに不自然に逆らうことなく寄り添い順応する精神と文化を
特に持ち合わせています。

桜の花のつぼみは、実は初夏には既にできていて秋は葉から養分を取り込みながら
越冬芽となり厳しい冬を経ることで初めて開花に必要な全ての条件が揃う
春の「ある日」を迎えられるのは有名な話です。

小雨降る寒々しいパリの空を窓越しに見上げながら、新春を間近に控えた遠い日本の
まだ見ぬ桜の花のつぼみに、そんな今の私たちを投影しています。

 

kei Kosaka

 

2020年12月24日

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